long COVID(ニューロCOVID罹患後症状)の診療について

 WHOの定義によるとCOVID-19発症から3ヶ月で少なくとも2ヶ月以上症状が持続し、他の診断による症状として説明がつかない状態としています。厚労省はこれを罹患後症状と紹介しています。英国のNICEのガイドラインでは4週間以上のそれをlong COVIDと定義しています。当院では罹患後症状、特にニューロCOVIDの領域について発症後4週間以上経過してみられる症状に関して診療をおこなっています。下記のような症状、病態でお困りの方はご相談ください。

①頭痛

 嗅上皮にはACE2が発現しているためSARS-CoV-2が侵入しやすいことは知られています。剖検例では嗅神経だけでなく、三叉神経節や脳幹を含めた脳実質にもウイルスRNAが確認されています。片頭痛では三叉神経系の異常活性化が重要な役割をはたしていることを考えると、SARS-CoV-2の三叉神経系への移行は注目すべき変化です。
 COVID-19で頭痛を認めた場合には静脈洞血栓症(COVID-19では血栓症が動脈にも静脈にも生じうる)、可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)、PRESなどの合併についても考慮する必要があり、PRESでは脳出血を随伴する可能性があります。
 頭痛は発症30日後にも10.2%にみられたと報告され、岡山大学のデータでも発症から79日の時点で17.2%に頭痛が認められています。症例ごとの頭痛の病態にあわせて適切な治療薬を選択します。

②ブレインフォグ

 認知機能低下、頭がはっきりしない、集中力低下といった患者自身の主観的な状態を指す用語です。神経病理学的検討も含め全貌が解明されていません。

③睡眠障害

④運動不耐

 肺炎後などの呼吸器機能低下や併存疾患がない場合にあっても、さまざまな程度の運動不耐が生じます。ひどい倦怠感により勤務や学業に支障をきたしたり、限度を超えた運動や労作のあとに寝たきり状態になることもあります。日内変動や週内変動も認められます。
 暗い静かな部屋から出られない、洗髪ができない、本が読めない、体のいたるところが痛い、すぐ横になりたくなる、などの症状が半年以上持続する症例は、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)への移行が示唆されます。

⑤嗅覚障害

 頭部MRIにて嗅球・嗅索、Straight gyrusに信号変化を認めることがあります。

⑥味覚障害

 顔面神経麻痺をともなう場合があります(鼓索神経障害)。免疫力低下に伴うヘルペスウイルスの再活性化が示唆されます。病態に応じて治療法を選択します。

⑦帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛

 免疫力低下に伴うヘルペスウイルスの再活性化が示唆されます。

⑧神経症状が先行し、MRI画像所見からCOVID-19を疑うべきケース

 mild encephalitis/encephalopathy with a reversible splenial lesion(MERS)、
脳梁膨大部に一過性の病変を認め、COVID-19の改善で縮小・消失する。