片頭痛における下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)を標的とした治療法について
慢性ストレスは、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)および脳由来の神経栄養因子(BDNF)mRNA発現を増加させます。
片頭痛の発症には、三叉神経系においてPACAPが重要な役割を果たしていると考えられており、以下の新しい治療アプローチが研究されています。
抗PACAPモノクローナル抗体
- PACAPそのものに結合してその働きを中和する抗体薬です。
- 新規抗体薬が、臨床試験において片頭痛の予防効果が有望視されています。
- 既存のCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)を標的とした治療とは独立した経路で作用するため、既存薬で効果不十分な患者への新たな選択肢として期待されています。
抗PAC1受容体抗体 / 拮抗薬
- PACAPが結合する受容体の一つである「PAC1受容体」をブロックする薬剤です。
- 中和抗体(LY3451838など)の試験も行われていますが、治療抵抗性の片頭痛に対する効果は一部で限定的との報告もあり、最適な標的の絞り込みが進められています。
抗PACAPモノクローナル抗体の治験データでは、既存のCGRP関連薬で十分な効果が得られなかった患者層に対しても、片頭痛の発生頻度を有意に減少させる有効性が示されています。
主な臨床試験の結果は以下の通りです。
2024年に「The New England Journal of Medicine(NEJM)」で発表されたデータによると、単回の静脈内投与によりプラセボと比較して有意な改善が見られました。
主要評価項目(月間片頭痛日数の変化):
- 750mg群:ベースライン(平均16.7日)から6.2日減少。
- プラセボ群:4.2日減少。
- 差:750mg群はプラセボ群より2.0日多く減少し、統計的有意差(P=0.02)が認められました。
50%レスポンダー率:
- 月間片頭痛日数が50%以上減少した患者の割合は、750mg群で32%(プラセボ群は27%)でした。
対象患者:
- 過去に2〜4種類の予防薬を試しても効果がなかった、あるいは禁忌で使えなかった難治性の片頭痛患者が含まれています。
今後の注目ポイント
既存薬との差別化:
CGRP標的薬(アイモビーグ、アジョビ、エムガルティ)に反応しなかった患者群に対する、ファースト・イン・クラスのPACAP標的薬としての地位を確立できるかが焦点です。
参考文献 Psychoneuroendocrinology2009Jul01Vol.34issue(6)


