LDL高値と頚動脈プラークの関連性について
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)高値と頚動脈プラークには、強い関連性があります。LDLコレステロールは動脈硬化の主要な原因物質であり、頚動脈プラークはその動脈硬化の典型的なあらわれの一つです。
LDLコレステロールが高値だと頚動脈プラークができやすいメカニズム
- 血管内壁へのLDLコレステロールの侵入: 血中のLDLコレステロールが過剰になると、血管の内側を覆う内皮細胞の隙間から血管壁の内側に入り込みやすくなります。
- 酸化LDLの生成: 血管壁に入り込んだLDLコレステロールは、活性酸素などによって酸化されます。この酸化LDLは、血管にとって有害な物質となります。
- マクロファージの貪食と泡沫細胞の形成: 酸化LDLは、白血球の一種であるマクロファージに異物として認識され、取り込まれます。酸化LDLを取り込んだマクロファージは、脂質を大量に蓄積して「泡沫細胞」と呼ばれる状態になります。
- プラークの形成: 泡沫細胞は、血管壁の奥に蓄積し、さらに血管平滑筋細胞も増殖・遊走して、コブ状の隆起を形成します。これが「プラーク」です。頚動脈にこのプラークができると、頚動脈プラークと呼ばれます。
- プラークの進行と動脈硬化: プラークが成長すると、血管の内腔が狭くなり、血流が悪くなります。また、プラークの表面が脆くなると破裂しやすくなり(不安定プラーク)、その部分に血栓ができて血管を詰まらせる(脳梗塞など)原因となります。
頚動脈プラークとLDLコレステロールの重要性
頚動脈は脳に血液を送る重要な血管であり、頚動脈にプラークが存在することは、全身の動脈硬化の進行度合いを示す指標の一つとなります。特に、頚動脈MRIや頚動脈エコー検査は、非侵襲的に頚動脈のプラークの有無や厚さ(IMT:内膜中膜複合体厚)、狭窄度などを評価できるため、動脈硬化の早期発見や進行状況の確認に非常に有用です。
LDLコレステロールが高い人は、頚動脈プラークができやすく、またプラークが進行しやすい傾向にあります。そのため、LDLコレステロールの管理は、頚動脈プラークの予防・改善、ひいては脳梗塞などの重篤な心血管イベントの予防に不可欠です。
頚動脈プラークが見つかった場合の対応
頚動脈プラークが見つかった場合、その大きさや性状、狭窄の程度、LDLコレステロール値などの他のリスク要因を総合的に評価し、適切な治療方針が決定されます。
生活習慣の改善
- 食事療法(特に飽和脂肪酸やコレステロールの摂取を控える)、運動、禁煙、飲酒制限などが基本となります。
薬物療法
- スタチン製剤: LDLコレステロールを強力に低下させ、プラークの安定化や退縮に効果が期待されます。
- 抗血小板薬: プラーク破裂による血栓形成を予防するために処方されることがあります。
- その他、高血圧や糖尿病などの合併症がある場合は、それぞれの治療薬が併用されます。
外科的治療・カテーテル治療
- プラークによる狭窄が高度で脳梗塞のリスクが高い場合には、頚動脈内膜剥離術(CEA)や頚動脈ステント留置術(CAS)などの手術が検討されます。
LDLコレステロール高値は、それ自体では自覚症状がないことが多いですが、知らないうちに頚動脈をはじめとする全身の血管で動脈硬化を進行させている可能性があります。
定期的な健康診断、脳ドック・頚動脈検診や医師との相談を通じて、ご自身のコレステロール値を適切に管理することが重要です。