カフェイン離脱頭痛について

まず、カフェイン(特にコーヒー)についての健康に対する良い影響に関して、日本人のデータに基づいた研究結果を以下にまとめます。

1. 死亡リスクの低下

国立がん研究センターを中心に行われた大規模な研究(多目的コホート研究)によると、日本人を対象とした追跡調査の結果、コーヒーを習慣的に飲む人は、ほとんど飲まない人に比べて全死亡リスクが低いことが明らかになっています。

  • 全死亡リスク: 1日に3〜4杯飲む人は、ほとんど飲まない人に比べて死亡リスクが約24%低下したというデータがあります。
  • 死因別のリスク低下: 特に、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患による死亡リスクの低下が顕著で、これらの病気による死亡リスクは、コーヒーを全く飲まない人と比較して約40%程度低いと報告されています。

これらの効果は、コーヒーに含まれるクロロゲン酸(血糖値の改善、血圧の調整、抗炎症作用など)やカフェイン(血管機能の改善、気管支拡張作用など)といった成分が、健康に好影響を与えている可能性が示唆されています。

2. 疾患予防

日本人のデータを基にした研究では、特定の疾患予防効果も報告されています。

  • 肝がん: 国立がん研究センターの研究では、コーヒーをほぼ毎日飲む人は、ほとんど飲まない人に比べて肝がんの発生率が約半分に減少することが示されています。1日の摂取量が増えるほど発生率が低下し、1日5杯以上飲む人では約4分の1にまで低下したというデータもあります。これは、カフェインではなく、コーヒーに含まれる別の成分が関与している可能性が示唆されています。
  • 2型糖尿病: コーヒーを飲む習慣がある人では、糖尿病の発症リスクが低いことが示されています。カフェインレスコーヒーでも効果があったという研究もあり、この効果にはクロロゲン酸などが関与していると考えられています。
  • その他: 痛風や動脈硬化の予防効果も、複数の研究で示唆されています。

3. 健康効果を得るためのポイント

これらの健康効果は、適量を摂取した場合に期待できるとされています。多くの研究で、健康に良いとされる摂取量の目安は1日3〜4杯程度です。

  • 飲みすぎに注意: 1日5杯以上など、過剰な摂取は、インスリンの働きを鈍らせて糖尿病のリスクを高めるといった報告もあるため注意が必要です。
  • ブラックコーヒーが望ましい: 砂糖やミルクを多量に入れると、糖分や脂質の過剰摂取につながる可能性があります。健康効果を目的とする場合は、ブラックコーヒーが望ましいとされています。
  • カフェインが苦手な人: カフェインレスコーヒーにもクロロゲン酸などの健康に良い成分が含まれているため、カフェインが苦手な方でも一定の健康効果が期待できます。

ただし、これらの研究は、あくまで「コーヒーを飲むこと」と「健康上の良い結果」との関連性を示したものであり、コーヒーが直接的に病気を治す「薬」のような効果があるわけではありません。バランスの取れた食生活や適度な運動など、健康的な生活習慣を前提として、コーヒーを賢く取り入れることが推奨されます。

 

次に、本題のカフェイン離脱頭痛について説明します。

カフェイン離脱症状は、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)や、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)にも記載されている、医学的に認められた状態です。

カフェイン離脱頭痛の症状は、片頭痛と似ていることがあり、以下のようなものが挙げられます。

  • ズキズキと脈打つような痛み(両側性のことが多い)
  • 光や音への過敏性
  • 吐き気や嘔吐
  • 疲労感、眠気
  • イライラ、集中力の低下

この頭痛は、摂取量や体質によって個人差がありますが、毎日コーヒー1杯(約100mgのカフェイン)程度でも起こることがあります。症状は、最後にカフェインを摂取してから12〜24時間以内に現れ、20〜51時間でピークに達し、通常2〜9日程度で収まるとされています。

日本の成人(30〜69歳)を対象とした研究では、平均的なカフェイン摂取量は男性で1日あたり268.3mg、女性で256.2mgでした。また、健康な成人の安全な摂取上限とされている400mgを超えて摂取している人が、男性で15%、女性で11%いたことが報告されています。また、日本人の主なカフェイン摂取源は、コーヒーだけでなく紅茶やお茶も挙げられます。これらの飲料やエナジードリンク、眠気防止薬などのカフェイン含有量を把握し、ご自身の体調に合わせて摂取量を管理することが大切です。特に多めの量を長期間、慢性的に摂取している人は要注意です。

頭痛がひどく日常生活に支障が出る場合は、自己判断せず医療機関を受診することが重要です。なぜならカフェイン離脱頭痛だと思われる症例も診察・検査により別の疾患(脳腫瘍など)である場合や、別の重篤な疾患も併発(同時に二つの疾患を併せ持っている)している可能性もあるためです。そのような場合にはむしろ併発疾患のほうが生命に関わることになります。